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虫愛づる姫君ファンクラブ

■目次■



「虫愛づる姫君」って何?

「堤中納言物語」に入っている短編小説のひとつ。

「堤中納言物語」って何?

堤中納言物語(つつみちゅうなごんものがたり)は、平安晩期ごろに成立したといわれる短編小説集。次の十一話から構成される。
  1. このついで(香炉を軸にした連想小説)
  2. 花桜折る少将(見初めた姫君をさらったら・・という話)
  3. よしなしごと(僧侶のおねだりの手紙的なもの)
  4. 冬ごもる空のけしき(男が思い人を思う心情的なもの)
  5. 虫愛づる姫君(※後述)
  6. 程ほどの懸想(三層の階級それぞれの愛の形)
  7. はいずみ(三角関係のあちゃーな話)
  8. はなだの女御(人生いろいろ。女もいろいろ。)
  9. 貝あわせ(少年貴族が偶然見つけたかわいい姫君のためにがんばる話)
  10. 逢坂こえぬ権中納言(権中納言の上手くいかない恋バナ)
  11. 思わぬ方にとまりする少将(相手交換しちゃった!!話)

「虫愛づる姫君」のあらすじ

大切に育てられているお姫さまがいました。
でもお姫さまは、虫大好きvな当時としても奇特な姫君でした。身なりもかまわず、虫一筋でした。
親が注意してもとうとうと言い訳をし、親も親で姫君のある意味覚者的な感じに、普通と違うとちょっと親ばかでした。
女房たちは影で姫君の悪口を言いたい放題でした。
姫君は近所のガキどもを買収して、虫を集めさせていました。

といったうわさを、いまどきの若者・右馬佐が聞きつけました。
とにかく面白いことに首を突っ込みたい年頃の右馬佐は、姫君に贈り物をしました。

姫君に届いた贈り物の袋からは、和歌(求愛の)とともに蛇がにょろりと出てきました。
姫君は蛇は嫌いらしく、挙動不審になり、屋敷は大騒ぎでした。
でも、蛇は作り物でした。
姫君は、チラシの裏ぐらいのいきおいでどうでもいい紙に和歌の返事(拒絶の)を書いて返しました。
右馬佐は、それを見てかえって面白がりました。

右馬佐は友人の中将を伴って、なぜか意味不明の女装をして姫君を見に行きました。
覗いていると都合よく姫君が庭に出てきて、ガギどもと遊びはじめました。
右馬佐は、姫君の風変わりぶりにあちゃーと思いましたが、意外に可愛いのでドッキリしました。

ガキどものひとりに気づかれたため、和歌を書いてガキどもに渡しました。
女房が姫君の代筆で返歌を書きましたが、右馬佐は捨て台詞ならぬ捨て和歌を読んでその日のことは帰って行きました。

「虫愛づる姫君」の主人公と相手(?)役

姫君主人公
姫君。13〜14才くらい?
虫好きと端正な美しさが強調される主人公。
かくれファンが多い気がする。
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右馬佐相手(?)役
右馬佐(うまのすけ)。17〜18才?
本名ではなく官職名。
悪ノリが好きそうな青年。

企画その1 姫君の容姿を検証

まず、原文から姫君の容姿について書かれている場所をひろうと
  • 耳はさみをして
  • 眉さらに抜きたまはず歯黒めさらに-中略-つけたまはず
  • いと白らかに笑みつついと眉黒にてなむ-後略-
  • 眉はしも烏毛虫だちためリ
  • さて歯茎は皮のむけたるにやあらむ
  • 頭へ衣着あげて髪も下がりば清げにはあれどけづりつくろはねばにやしぶげに見ゆるを眉いと黒く花ばなとあざやかにすずしげに見えたり
  • 口つきも愛敬づきて清げなれど歯黒めつけねばいと世づかず
  • 化粧したらば清げにはありぬべし
  • かくまでやつしたれど見にくくはあらでいと様異にあざやかにけ高く花やかなる様ぞ-後略-
  • 練り糸の綾の袿一襲はたおりめの小袿一襲白き袴を好みて着たまえり
  • 丈だちよきほどに髪も袿ばかりにていと多かりすそもそがねばふさやかならねどととのほりてなかなかうつくしげなり
  • うとましかるべきさまなれどいと清げにけ高くわづらはしきけぞ異なるべき
となります。このうち装いについて書かれているところをまとめると
  1. よく髪を耳にはさんでいて(当時は高貴な姫君はあまりしない)
  2. 眉は抜かず(普通は全部抜いて黛をつける)
  3. お歯黒も断固せず(既婚女性に限らず13歳〜くらいからつける虫歯予防の意味もあったらしい)
  4. 地味な(むしろ年寄りくさい)色の着物をつけ
  5. 個性的な柄の上着を頭からかぶっている(どんな状況かいまいち分からない。よく子供がトレーナーを頭からかぶって首の部分から顔だけ出している感じ?)
といったところです。まあ現代の感覚で読むとあまり分からないですが当時の姫君の格好じゃありません。
次に肯定的な形容詞を拾ってみると、”きよげ”3回、”あざやか”2回、”はな(はなばな/はなやか)”2回、”け高し”2回、”愛敬づく”1回、”涼しげ”1回、”ととのほる”1回、”うつくし”1回などが出てきます。

蛇足ですが訳してみると(あくまでここでのみの場合です)
  • きよげ:きれいな
  • あざやか:美しくはっきりしている
  • はな(はなばな/はなやか):きわだっている
  • け高し:気品がある
  • 愛敬づく:魅力がある
  • 涼しげ:さっぱりしている
  • ととのほる:まとまっている
  • うつくし:好ましい

わあ姫君って美女だね。・・という結論で終わらせるのはあまりに芸がないのでもう少し詳しく検証(?)してみると

一番多く出てきたのはきよげ。 当時の美をあらわす形容詞の中で”きよら”についでNo2位置にあります。”きよら”が使われている有名人物(?)では、光源氏や紫の上とかです。つまり そのくらいのレベルに使う形容詞ということですね。じゃあ姫君は化粧したら”きよら”になるのかと考えてみたんですが、よく考えたら紫の上が源氏に垣間見 されたときたしか化粧してなかったし(こちらは年が若かったから)おそらく”きよら”まではいかないですかね。
ちなみにきよげ愛敬づくけ高しととのほるあざやかは美少年によく使われる形容詞だそうで(新潮日本古典集成堤中納言物語より)。
顔の部分で表記があるのは眉と口元のみなんですが当時の化粧は唇も白粉で白く塗リつぶしていたらしいので、化粧をしていないのなら唇がそのまま見えるため確かに印象的。右馬の佐が感想で目元じゃなく、口元を好ましく思っているのが何かアレで・・ (邪推)
まとめてみると地は華やかな感じの美女で、化粧などで装っていないためみずみずしく見えるといったかんじでしょうか。
華やかなということは結構目鼻立ちがはっきりしていると仮定しやや目は大きめで猫目気味(希望)、もちろん眉は太めできりっとしている。中背とあるので当時の女性平均身長の150cmくらいで、中肉くらいがいいなあ(希望)。

今度は右馬の佐の外見が書いてあるところを拾ってみると
  • うちはやりて物怖ぢせず愛敬づきたり
  • 清げなる男
  • いとはづかしげなる人
・・と一般的なことしか書いていないので分からないんですが・・。ただ女装がばれてるし、いわゆる”女としてみまほしき”感じではないのかも。
行動からして二枚目な感じじゃないような・・絵に描いたようなイケメンは蛇送ったりしない。
気になること・・
姫君の悪口を言っている女房:皮むいた毛虫って・・。言葉のあやだろうけどやったことあるのなら以外に姫よりつわものだ。 ていうか皮あるのかな?むしろ潰れて緑の液でてきそう。歯茎っぽいものなら別の生き物の皮をむいたほうが・・(自粛)。
右馬の佐と中将の女装:少女漫画でよく見かける文化祭とかで登場人物の男にセーラー服着せたりする、いわゆる読者サービスと同じ香りがするのは気のせい?似合いすぎても困るがあまりに似合わなすぎるのはもっと嫌という微妙なバランス。

「虫愛づる姫君」を読むことのできる文献

書籍名 落窪物語・堤中納言物語 日本古典文学大系(13) 岩波書店
筆者 松尾聰・寺本直彦
恋愛発展期待度 まあまあ
特記事項 原文あり。訳文なし。猟奇趣味説反対派。

書籍名 落窪物語・堤中納言物語 日本古典文学全集10 小学館
筆者 三谷栄一・稲賀敬二
恋愛発展期待度 結構あり
特記事項 原文あり。訳文なし。モデル藤原宗輔説。

書籍名 堤中納言物語・とりかえばや物語 鑑賞日本古典文学12 角川書店
筆者 三谷栄一・今井源衛
恋愛発展期待度 かなりあり
特記事項 原文・訳文あり。藤原宗輔萎黄病説。

書籍名 新潮日本古典集成 堤中納言物語
筆者 塚原鉄雄
恋愛発展期待度 結構あり
特記事項 原文あり。訳文なし。猟奇趣味説

書籍名 少年少女古典文学館 講談社
筆者 堤中納言物語・干刈あがた うつほ物語・津島祐子
恋愛発展期待度 まあまあ
特記事項 訳文のみ。子供向け。

書籍名 落窪物語 幸せになったお姫さまほか 小峰書店
筆者 三越左千夫編
恋愛発展期待度 まあまあ
特記事項 訳文のみ。子供向け。

書籍名 虫めずる姫ぎみ 国土社
筆者 え・しらみねみよこ ぶん・いまぜきのぶこ
恋愛発展期待度 かなりあり
特記事項 絵本。上記の「少年少女古典文学館」のあとがきに言及されている絵本ではないかと思われる。

書籍名 マンガ日本の古典7 堤中納言物語 中央公論社
筆者 坂田靖子
恋愛発展期待度 あまりなし
特記事項 漫画。

書籍名 物語の女たち くもん出版
筆者 下重暁子
特記事項 物語ではなく、「虫愛づる姫君」他のコラム。

書籍名 風の谷のナウシカ1(ワイド版) アニメージュコミックス 徳間書店
筆者 宮崎駿
特記事項 あとがきに、「虫愛づる姫君」(と思われる)を言及した部分がある。
  • 猟奇趣味説:「虫愛づる姫君」は、世紀末の退廃からでた猟奇趣味の産物だとする説
  • 藤原宗輔:「虫愛づる姫君」のモデルではといわれる、蜂を鍾愛した公卿(実在)。
  • 萎黄病:男っぽくなるなどの症状の出る病気。

「虫愛づる姫君」を取り扱っているサイト

綺羅拾遺
栗原若葉さんが運営している平安小説サイトさんです。堤中納言物語のを現代語訳したものや平安時代の創作小説があり、もちろん”虫愛づる姫君”の現代語訳も読めます。矛盾のない読みやすい文章でおすすめです。
ふでの跡
しのぶさんの運営している平安サイトです。藤原行成さんについてなど詳しく扱っていらっしゃいます。虫愛づる姫君の記事もあるので、ぜひ行って見てください。

■おまけのいらすと■

右馬の佐と姫君
庭の姫君
姫君現代バージョン
蜘蛛装束の姫君(上記の「綺羅拾遺さまの小説にでてくる蜘蛛重です」)
虫童たち